エリート検事はウブな彼女に激しい独占愛を滾らせる
正義の検事と一夜の過ち
「昨夜は、その……申し訳なかった。あんなに酒を飲むのは久しぶりで、調子に乗りすぎた」
「いえ、私の方こそ……」
ベッドの上、下着姿で正座をして向き合う、成人男女ふたり。どう見ても、昨夜酔って間違いを起こし、気まずい翌朝の図、である。
でもまぁ、私の予想では、「昨夜のことはお互い忘れましょう」という流れになって、彼とは今まで通り、検事と事務官という関係に戻るだけだろう。
職場で〝鬼畜の津雲〟だなんて異名を持つ彼ならなおさら、こんな失態は隠しておきたいだろうし。
私はベッドサイドの小さなテーブルに手を伸ばし、昨夜津雲さんに外されてしまった眼鏡をかけた。
ボストン型で、フレームはブラウンのクラシックな眼鏡。私はひどい近眼なので、ちょっと離れた場所にあるものは、これをかけないと見えないのだ。
ようやく視界がハッキリしたところで、私はちらりと彼の表情を窺う。切れ長で釣り気味の涼しい目元はいつもなら怖い印象なのだけれど、今はどこか気だるい雰囲気の憂い顔。
髪型も、仕事の時の隙の無いオールバックとは違い、前髪が全部額にかかっていて、普段の彼とは印象が違う。
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