エリート検事はウブな彼女に激しい独占愛を滾らせる
三船さんが、電話の向こうで沈黙する。
もしかしたら傷つけてしまったかもしれないが、こればかりは仕方ない。
『……ふうん。やっぱりそうなんだ』
やがて聞こえてきた三船さんの声は、おもしろくない、とでも言いたげな、棘のある響きを含んでいた。
怒らせてしまったかな……。でも、本当のことだし……。
『それって、職場にはあまりバレたくない感じだよね』
「……まぁ、今の段階では、そうですね」
きちんと結婚が決まったわけでもないのに報告するのもおかしいし、報告したせいですぐに異動なんて話になったら困るし……。
『じゃ、俺がバラしちゃおうかな』
「えっ? 三船さん、なに言って――」
『だからさ。それが嫌なら、会おうって言ってるの。そんなに頑なにならなくたっていいじゃん。一緒においしいもの食べるだけって思えば。ね?』
こ、交換条件ってこと? 先ほど嘘が嫌いと言っていた弁護士先生とは思えない姑息な手段だ……。
そうは言っても、うまく逃げ切れそうな方法が思いつかない。今さらながら、津雲さんが三船さんを警戒する理由がよくわかった。