エリート検事はウブな彼女に激しい独占愛を滾らせる

「うそ、すごいです。旅館の朝食みたい」
「それは言いすぎだ」

 軽く笑って、彼も向かい側の席につく。一緒に朝ご飯って、なんだかしみじみうれしいな。

 自然と微笑んだ私を見て、無表情だった津雲さんの表情もやわらかいものになる。

「いただきます」
「どうぞ」

 まずは、ほどよく焦げた味噌の香りに誘われて、鶏肉にかぶりつく。味噌に漬けていた効果か、肉はとても柔らかく、やや濃い目の味付けが、白いご飯と相性抜群だ。

 脇に添えてある長ネギも一緒のフライパンで焼いたらしく、噛んだらトロっととろけて、味噌とネギの甘さとが溶け合った。

「おいしい。津雲さんってお料理上手なんですね……。教えてください今度」
「ああ、簡単なものでよければな。いや、待てよ……キッチンに立つ和香菜を見て、俺は平常心でいられるのか?」

 後半、ぶつぶつと謎のひとりごとを話しだす彼に、私は首を傾げる。

「平常心?」
「なんでもない。大丈夫だ。……おそらく」

 ひとりでうんうん頷く津雲さんを不思議に思いながらも、とにかく平和で幸せな朝食タイムだった。

 私たちが結婚したら、正直、めちゃくちゃうまくいくんじゃないだろうか。

 恋愛に苦手意識を持っていたはずの私がそう自惚れてしまうほどに、心地いい空気がゆったりと、私たちの間に流れていた。


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