エリート検事はウブな彼女に激しい独占愛を滾らせる
「こうやって、氷水で冷やしながらこねるのがコツだ」
「は、はい……。わかりましたから、あの、そろそろ」
和香菜が小さく俺を振り返り、困った顔で睨んだ。頬から耳にかけて真っ赤になっているのがよくわかる。
なぜなら俺は現在、後ろから彼女に密着した状態で、ボウルに入ったひき肉をこねているからだ。今夜の夕食はハンバーグなのである。
「そろそろ、なんだ」
「いえ、その、あの」
いくら察しの悪い俺でも、本当は和香菜が「そろそろ離れてください」と言いたいのであろうことくらいは読める。
最初はちょっとした悪ふざけのつもりでこんなふうに料理の密着指導を始めたのだが、なんとなく離れるタイミングを失ってしまったというか……単純に離れたくないというか。
だから、ハッキリ言われないうちは、俺からは離れてやらない。
「ほら、いい感じに粘りが出てきた」
耳のそばでなにか囁くと、いつも和香菜の肩がぴょこんと少しだけ跳ねる。
かわいい……。くすぐったいのだろうな。
調子に乗って、ボウルの中でタネとごっちゃになった手を握って、肉と一緒にこねてやる。