エリート検事はウブな彼女に激しい独占愛を滾らせる
手当てのキスとチョコレート
錆びた匂いのする、古い倉庫の中。ここへ来るまでの車の中では目隠しをされていたので詳しい場所はわからないが、私はそこで過去の自分を悔いていた。
津雲さんのしていたことは間違いじゃなかった。〝彼女〟はこの男に暴力で支配されていたのだ。
後ろ手に両手を縛られ、汚れたコンクリートの床に座らされた状態で、私は目の前の男を睨んだ。
「さて、どうやって服従させようかな」
しゃがみ込んで私の顔を覗くのは、悪趣味な紫色のスカジャンを羽織っている、金髪の若い男。その瞳には猟奇的な色が浮かび、口元はにやついている。
車内で一方的にされた自己紹介によると、名前は時田渉。この辺り一帯に影響力のある半グレ集団のリーダーらしい。
「……あまり派手なことをしない方がいいんじゃない? この人、検察の人間なのよ?」
時田の背後に立ち、怯えたようにそう言うのは、見覚えのある女性。
津雲さんとのデート中に出会い、その後何度も彼を呼び出し私に嫉妬心を抱かせた、儚げな印象の美人だ。
私は街中で彼女に声を掛けられ、立ち止まったところを、別の男たちに拉致された。おそらく、現在倉庫の出入り口で見張りをしているふたりの男だろう。