エリート検事はウブな彼女に激しい独占愛を滾らせる
そして、カレンダーが三月に変わり、なんとなく空気も春めいてきた頃のこと。
仕事もプライベートも順調で、毎日絶好調だった私の耳に、とんでもないニュースが飛び込んできた。
「和香菜、知ってる!? 津雲検事が左遷されちゃうって」
久しぶりに志保からいつもの洋食店でのランチに誘われたと思ったら、席に着くなり彼女が言いだした。メニューを見ていた私は困惑し、眉根を寄せて聞き返す。
「はっ……? ちょっと、なにそれ」
「先輩たちが噂してたの。津雲検事は担当の事務官をハニートラップに使って、事件関係者から証言を引き出したのがバレて、どこか遠くの地検に転勤させられるんだって」
担当の事務官って……私のことだよね。でもハニートラップってなに? そんなの、心当たりないんですけど!
「大雅さんはそんな卑怯なことしない!」
「もちろん私はわかってる。和香菜がハニートラップなんかできる器用な人間じゃないっていうのもね。たぶん、その辺はただ噂に尾ひれがついただけなんだろうけど……転勤はホントっぽい気がしない?」
「私と付き合ってるのが上にバレて……? でもどっちにしろ、どうして私になにも話してくれないんだろう……」