エリート検事はウブな彼女に激しい独占愛を滾らせる

「ああ。こうなったらもう、結婚するしかない」
「けっ……!」

 思わず目をひん剥いて絶句する。そりゃ確かに、付き合ってもいない人と寝てしまったのはよくないことだと思う。でも、どうして急に結婚にまで話が飛躍するの?

 どうやら大真面目に話をしているらしい津雲さんの顔を見ながら、なんでこんなことになったんだっけと、私はハイスピードで昨日まで記憶を巻き戻していった。


 * * *


 社会人四年目、二十六歳の私、浅見和香菜(わかな)が勤務するのは、東京都千代田区霞が関にある、東京地方検察庁。

 自分で言うのもなんだけど、幼いころから正義感が強く、成長するにつれ警察か検察の仕事に就きたいと思うようになっていた。

 しかし、ひとり娘ということもあり、警察官や検察官になるのは、両親が猛反対。犯罪者から恨みを買って危ない目に遭ったらどうするのと諭され、お互いの妥協点を探った結果、検察事務官なら、というところに落ち着いた。

 それから必死で勉強した甲斐あって、国家公務員試験にはすんなり合格。

 大学卒業と同時に東京地検に勤務することになり、最初の二年は事務局部門に配属され、一般企業でいう総務の仕事をした。

< 3 / 166 >

この作品をシェア

pagetop