エリート検事はウブな彼女に激しい独占愛を滾らせる
「あの、危ないので運転中は離してください。安全義務違反にあたります」
「……そうだな。検察官が違反してたら洒落にならない」
津雲さんはとくに意に介した様子もなく、今度はしっかり両手を使って車を発進させた。
行き先は、都内の水族館。ホテルやレストラン、巨大なショッピングモールが一ケ所に集められた複合商業施設の屋上にある、人気のデートスポットだ。
基本的にクールな性格の彼が生き物を見たらどうなるのか興味があって、私からリクエストした。
「水族館なんて高校の時以来だから楽しみです」
「俺は、小学校以来だ。低学年の見学旅行だったかな……。ほとんど記憶にない」
「なにか見たい生き物いますか?」
「……ダイオウグソクムシ、だな」
ダ、ダイオウグソクムシ? なにそれ、ムシってことは、魚じゃないの?
マイナーな生き物の名前を出されてキョトンと固まっていると、津雲さんがハッとして「間違った……」とため息交じりに言った。