エリート検事はウブな彼女に激しい独占愛を滾らせる
「わぁ……見てください! あそこ、カニがいます」
「カニ? どこだ……?」
「あの、岩と岩の隙間です。擬態しているからちょっとわかりづらいですが」
「見えないな……。検察官の目をごまかすとは生意気なヤツめ」
プライベートの津雲さんは思っていたよりずっとやわらかい印象で、水槽の前で、カニ相手にムキになって怖い顔をするという、少年っぽい一面がなんだかかわいかった。
「クラゲか……。なぜだかずっと見ていられるな」
「ですね。気ままに海を漂っている感じ、なんだか羨ましい」
かと思えば、幻想的な照明に照らされたクラゲをぼんやり眺める横顔は、見とれてしまうほど大人っぽくて、どきりとする。
「執務室で飼うか」
「えっ。怒られませんか? 生き物を飼うなんて」
「冗談だ。クラゲに気を取られて被疑者にぼーっとされたら困る」
「なんだ、冗談ですか……。クラゲのいる執務室を想像して、ちょっといいなって思っちゃいましたよ」
他愛のない会話をしながら、順路の通りに館内を回る。その途中で差し掛かった深海生物コーナーで、ずっと気になっていた例の生物を見つけた。