エリート検事はウブな彼女に激しい独占愛を滾らせる
「あっ。あれですか、ダイオウグソクムシ!」
その暗い水槽に近づいていくと、ダンゴムシを巨大化させたような、硬い殻を持つ不思議な生物がいた。正面から顔を覗くと、意外とキリっとした目と、立派な触覚が二対。
グロテスクなようで、なんだかかわいい気もする。
「この子が好きなんですか? 津雲さん」
「いや、だから俺はカクレクマノミが――」
「さっきの水槽にいましたけど、津雲さんめっちゃスルーしてましたよ?」
見たいって言ってたわりに、サラッと見て終わりなんだなーとちょっと不自然に思っていたのだ。
やがて津雲さんは観念したようにため息をつき、真剣な目でダイオウグソクムシを見ながら白状する。
「好きというほどではないんだが……このビジュアル、妙に心惹かれないか? チケットを予約する時に水族館のホームページでたまたま写真を見て、なんとしてでも実物を見たくなった」
「ふふっ。わかります。なーんか愛嬌ある顔なんですよね」
そう言って、津雲さんと一緒に水槽を覗く。しかし目の前にいたダイオウグソクムシは、私たちの視線をうっとうしがるようにのそのそと動いて、お尻を向けてしまった。