エリート検事はウブな彼女に激しい独占愛を滾らせる
「浅見と申します。……津雲さん、いったいどうされたんですか?」
女性に名乗ってから津雲さんに尋ねると、彼は少し言いづらそうに語りだす。
「いや……実は、たまたま入った店で、ひと組のカップルが喧嘩を始めて……言い合いがなかなか収まらずにふたりは店を出て行ったんだが、なにか嫌な予感がしたんで、後をつけたんだ」
「お店って、なんのお店ですか? 津雲さん、お手洗いに行ってたんじゃ……?」
彼の話に違和感を覚えて思わずそう尋ねると、津雲さんは少々焦った様子で畳みかける。
「いや、俺の話はひとまず後回しにしてだな……。とにかくカップルを追いかけていったら、非常階段で、この女性が倒れていたんだ。一緒にいた男性はすでにいなくなっていたが、彼に暴力を受けたらしく、ところどころに痣がある」
「暴力……! それはひどい、すぐ警察に連絡した方がいいんじゃ――」
「やめてください!」
私の言葉を遮るようにして、津雲さんに寄り添う女性が突然声をあげた。彼女は怯え切ったような目で私を見つめ、か細い声で続ける。
「やめてください……。そんなことをしたら、ますます彼が逆上します……!」