エリート検事はウブな彼女に激しい独占愛を滾らせる
「悪いがそれはできません。ほかにも抱えている事件が山ほどあるので」
「そうですよね……。立派な検察官なんですものね。でも、それなら私も彼のことをお話しすることはできません。……警察は信用できませんから」
女性は冷めた声で言うと、スッと津雲さんから体を離す。
さっきまでと別人のようになってしまった彼女を、津雲さんはなにかを見定めるように目を細めて見つめていた。しかしやがて――。
「わかりました。またなにかあった時、110番が嫌ならここに連絡を」
そう言って、彼女に自分の名刺を渡した。難しい事件を追っている時、彼がときどき関係者に渡している、彼個人の携帯番号を書き込んであるものだ。
その時、ちくんと、胸に針が刺さったような痛みを感じた。
な、なんで痛いの……? 津雲さんは困っている女性を助けるために、連絡先を渡しただけだよ? なにも間違ったことはしていない。
私が自分に言い聞かせていると、女性の華やいだ声が聞こえて。
「ありがとうございます……! なんだか、これを持っているだけで、津雲さんが守ってくれているみたい。すごく心強いです!」
「身の危険を感じたら、遠慮せず連絡してください」
ふたりの会話を聞いているだけで、心が塞いでいく。