エリート検事はウブな彼女に激しい独占愛を滾らせる
女性は反省の色を見せつつも、犯行に及んでしまった自分の心理状況を事細かに津雲さんに説明し、『あの時の自分はああするしかなかった』と彼に共感を求めた。
が、当然津雲さんが彼女に寄り添うはずもなく……『極めて身勝手な理由』とバッサリ切り捨て、彼女の起訴を決めた。
それから淡々と事務的な話に移った彼に、女性は不満げに言ったのだ。『あなた、本気で人を好きになったことがないでしょう。つまらない人間ね』と。
さらに、『本気の恋愛もしたことないようじゃ、犯罪者になめられるわよ?』なんて、挑発的なことまで言っていた。
津雲さんはその場では軽くあしらっていたけれど、どうやら内心かなり腹が立っていたらしい。今もその時のことを思い出し、苛立たしげにつぶやく。
「なにゆえ犯罪者に恋愛指南されなければならないんだ。しかも、その恋愛のせいで自分の人生を棒に振ったような奴に」
「確か、国交省にお勤めでしたよね。建築士の資格も持っていて、すごく頭のよさそうな女性だったのに」
「まったく理解不能だ」
津雲さんは吐き捨てるように言うと、愚痴は終わりにしてパソコンに向かった。切れ長の目を細め、集中モードに入る。