エリート検事はウブな彼女に激しい独占愛を滾らせる
「で? デートすっぽかされた津雲さんの、今日執務室で顔を合わせた時の反応は?」
「……きわめていつも通り」
「ま、そうだよね。仕事に私情を持ち込むタイプじゃなさそうだし」
正直なところ、私はちょっと不機嫌な彼を想像してこわごわ出勤したのだが、彼は昨日の出来事など忘れているかのように、ごく普通に「おはよう」と挨拶をし、いつも通り、私に取り調べの準備など、てきぱき指示を与えた。
私はホッとした反面、昨日の私の態度に彼がなにも感じていないんだとしたら、それはそれでショックだな……という、なんともワガママな思いを抱えつつ、平静を装って仕事をしている。
「……そんなに悩んだ顔しちゃって、マジで好きなんだねえ」
志保が、微笑ましいものを見るような目つきでしみじみ呟く。
「好き……。やっぱり、そうなのかな」
私は恋愛経験がまったくないわけじゃないけど、苦手分野であることは昔から変わらない。
今回はとくに、心より先に体をつなげてしまって、それから始まった関係だから、自分の気持ちも彼の気持ちもいろいろあやふやで……自信が持てない。