エリート検事はウブな彼女に激しい独占愛を滾らせる

 その後、津雲さんは二時間以上帰ってこず、私はやるべき仕事をこなしながらも常に胸がモヤモヤした状態だった。

 ダメだ。このままだと腐る。ちょっと外の景色でも見よう……。

 椅子から立って窓辺に近づき、道路を挟んで向かい側に見える日比谷公園の緑に癒しを求めようとした時だ。不意に執務室のドアがノックされ、私は「はい」と返事をした。

 一瞬、津雲さんが帰ってきた?と期待したが、彼がノックをするはずがない。誰だろうと思いながら「どうぞ」と声を掛けると、ドアからひょっこり顔を出したのは意外な人物だった。

「こんにちは~。あ、今津雲のヤツいないんだね、ラッキー!」
「み、三船さん……?」

 津雲さんのデスクが空席なことになぜかうれしそうな顔をしたその人は、以前一度だけ会ったことのある、弁護士の三船さんだった。

「三船さんが、どうしてここに?」
「うん、ちょっとここにある資料を見せてもらいに。ついでに元職場を懐かしみつつ、和香菜ちゃんにも会えたらいいな~と思って」

 ふわっとした茶髪のパーマに人懐っこい笑みがよく似合う彼に、私はきょとんとして尋ねる。

「元職場……?」

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