エリート検事はウブな彼女に激しい独占愛を滾らせる

 気まずくて思わず彼から目線を外すと、三船さんは「ところで」と言いながら椅子から立ち上がり、ドアのそばに突っ立ったままだった私に近づいてきて言う。

「今度、ふたりで美味しい食事でも一緒にど――」

 その時、三船さんの声をかき消すようにドアが開いた。姿を現したのはこの部屋の主で、彼は私と三船さんを見て一瞬固まった。

「あ、津雲さん。おかえりなさい……」

 私はそう挨拶したが、彼はスルーして三船さんを睨みつけ、低い声で短く問う。

「……人の部屋で勝手になにをしている」
「こわっ。別になんもしてないです~。てか、する前にお前が帰ってきちゃったんです~」

 お茶らけた三船さんの態度に、ますます津雲さんの表情が険しくなる。

「仕事の邪魔だ。即刻出ていけ」
「はいはい。じゃ、和香菜ちゃん、また今度」
「はい……どうも」

 ぺこりとお辞儀をして三船さんを見送り、ドアが閉まると執務室は途端に気まずい静けさに包まれる。

 津雲さんの表情をちらっと窺うと、彼もまた遠慮がちに私の方を見たのでドキッと鼓動が跳ねた。

「あの弁護士、なんの用だったんだ?」

 淡々と問いかけられ、私は三船さんに聞いたことをそのまま伝える。

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