エリート検事はウブな彼女に激しい独占愛を滾らせる
去年の春、大阪地検からここ東京地検に異動してきた津雲さんは、法科大学院在学中に司法試験に一発合格し、検事になってからも裁判ではほとんど負け知らずのエリート。
被告人にどんな事情があろうと、厳格に法にのっとり彼らに罪を償わせようとする姿は、時に冷酷に見えるほど。
しかし、私はそんな彼を尊敬しているし、正義に対する考え方が自分に似ているとも思う。
なので、一緒に仕事をする時間が長くなればなるほど、彼のような立派な検察官の立会事務官になれたことは幸運だ、と思うようになっていた。
順調に業務をこなすことのできたその日は、定時の十七時十五分ぴったりにパソコンを閉じることができた。金曜日で疲れも溜まっていたので、早く帰ろうと帰り支度をする。
そしてコートを羽織ったところで、東京地検のトップである検事正に呼び出されていた津雲さんが執務室に戻ってきた。
……なんだか機嫌が悪そうだ。彼の眉間にしわが刻まれているのはわりとデフォルトなのだが、それがいっそう深くなっている。
とても声を掛けづらいけれど、挨拶せずに帰るわけにもいかない。