エリート検事はウブな彼女に激しい独占愛を滾らせる
「な……なんだろう」
ついに仲直りのチャンス到来……? でも、あまり期待しすぎてもダメだよね。仕事の話かもしれないし。
高鳴る胸をなだめつつ、恐る恐るスマホを耳に当てた。
「もしもし」
『……俺だ。今、話せるか?』
「はい。大丈夫です。なんのお話でしょう」
答えながら無意識に体を起こし、ベッドの上で正座する。
『別に、大した用はないんだが……。浅見のこ――』
『津雲さ~ん、アップルパイが焼けましたよ~』
彼の言いかけた言葉に、女性の声が重なった。媚を含んだその甘ったるい声に聞き覚えがありすぎて、私はひゅっと息を呑む。
なんで? なんで、津雲さんの電話から彼女の声が……?
「あの、今のって……」
『……聞こえたか。実は、今日も彼女の家にいる。先日も誤解していたようだから言っておくが、決して私的な訪問ではない。これは捜査の一環で』
……捜査の一環で、アップルパイを焼いてもらうだろうか。
百歩譲って本当に捜査だとしても、私にとっては彼があの女性と会っている事実だけで、心が乱される。そのことに、彼はどうして気づかないんだろう。
私とは、大晦日もお正月も一緒にいられないのに……。