エリート検事はウブな彼女に激しい独占愛を滾らせる

 私は胸にくすぶる不満を全部ぶちまけようとして……けれど寸前で思いとどまった。

 この状況……いつか彼が話してくれた、過去の恋愛の失敗談にそっくりじゃない? 頭の片隅でそんなことを思ったからだ。

 当時の彼は、デートより事件を優先して、恋人を怒らせた。

 でもどうしたらよかったのかわからなくて、『事件を放り出せばよかったのか』と聞いたら、『そういうことじゃない』と彼女がますます不機嫌になって、別れることになったんだっけ……。

 私は、私だけは、そんな不器用な彼の味方でいてあげたい。

 あの夜の私は、そう思ったから、彼に抱かれたんじゃなかった?

 ……ここは、堪えるところかもしれない。津雲さんの行動には、きっと意味がある。

「私、信じます」
『浅見……』
「でも、次の週末は、私と一緒にいてくれますよね? 土曜日も、日曜日もです」
『もちろんだ。約束する』

 そう言った津雲さんの声は、穏やかだった。

 よかった……。きっと今、私たち、同じくらいホッとしてる。

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