エリート検事はウブな彼女に激しい独占愛を滾らせる
「誰かさん?」
キョトンとする私を見て、益子さんは口が滑ったという顔をした後、にっこり微笑む。
「今のは聞かなかったことにして?」
「……はい」
正直とても気になるけど、大先輩の益子さんをこれ以上追及するわけにもいかない。
「じゃ、私はお先に失礼するわ」
「お疲れさまでした」
益子検事を見送り、自分も帰ろうとしてコートを羽織ったその時だ。バッグの中でスマホが振動しているのに気づき、取り出してみてどきりとする。津雲さんから電話だ。
明日からの週末、彼の家で過ごすという以外はまだ何も決めていなかったから、そのことかもしれない。
「もしもし?」
ドキドキしながら電話に出たが、すぐに返事がなかった。
もう一度「もしもし、津雲さん?」と呼びかけると、『あさ、み……』と、かすれた声がして、それから彼が呟く。
『死ぬ……』
「えっ……!?」
なんでそんな物騒なこと……! まさか、危ない事件に巻き込まれたんじゃ……!?
私はサッと青ざめ、スマホを耳に当てたまま、執務室を飛び出す。