エリート検事はウブな彼女に激しい独占愛を滾らせる

 同意を求められ、私はこくこくとうなずいた。

 津雲さんは、確かにこの東京地検イチ厳しい検事で、犯罪者たちがどんな事情を抱えていようと、共感も同情もいっさいせず、犯した罪に関してだけを厳しく追及する。……しかし、それのどこがいけないのだろう。

「津雲さんのおっしゃる通り、関係ないと思います。むしろ、どんな時も情に振り回されず冷静にいられる津雲さんのような人こそ、他の誰よりも検察官に適任かと」
「浅見……」
「実は私も、恋愛は苦手なんです。喧嘩のたびにいつも正論振りかざして恋人を論破して、怖がられて逃げられてきたので……」

 津雲さんを励ますつもりで、自分の痛いエピソードを披露した。

 昔はいちいち傷ついて泣いたりもしたけれど、ここ数年でもう開き直った。自分の性格は恋愛向きでない。その代わり、持ち前の真面目さ、正義感を発揮できる、検察事務官の仕事に生きようって。

「なんだか似ているようだな、俺たち」

 津雲さんがそう言って、あまりうれしくなさそうに笑う。

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