アイドル絶対殺戮戦線
世界がベールに包まれていくようだと思った。


嫌なことも全て忘れて、本当に風になったように感じた。


――この瞬間だけは。このときだけは。


歌い終わった私が目を開けたとき、掲示板はその動きの一切を止めていた。


十数秒遅れて、溢れんばかりのコメントが押し寄せる。液晶はチカチカと点滅して、懸命に刻一刻と変わるコメントの画面を表示する。


【リアル大宮一歌】

【まさか生であの歌声を聴けるとは】

【大宮一歌の娘なら応援するわwww】


それは私のほしかった言葉とは少し違ったけれど、歪んだ眉を隠すように私は深々とお辞儀した。


反響は明らかだった。私は瞬間最高得票率を記録し、音速で100LOVEを集めおえた。


個人画面の下にあるハートマークに囲まれた残酷な数字を、もう気にしなくてもいいと思うと何よりも心が落ち着く。
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