先生!好きだからっ!!~どうしたって忘れられない人はいるものです~
最後にわたしがトスをあげているところまで来ると、わたしのほうは見ずに、スパイクをひたすら練習する2人のアタッカーに向かって、いろんな指導を時間をかけてやりはじめた。

わたしはトスをあげることに集中する。

伊奈先生の指導を必死で聞いて、なんとか吸収しようとする女子たちを見ていると…なんだかこの間まで自分がバレーやってたかのような感覚に陥った。

また…思い出す…
高校時代の自分…

バレーに必死だった…みんなで勝ちたくて…全国行きたくて…必死で戦ってたあのころ…

そんなわたしの背中をいつも見守っていてくれてたのが…


「おい。」

「……」

「おい!帰らねーのか?」

「え?」

あわてて周りを見回す。
と…

もうみんな帰っていて…
体育館はガランとしている…

どうやら昔の思い出に浸りながら片づけていたらみんな知らないうちに帰ってしまったらしい…。

「いやっ…帰ります!」

「何ぼーっとしてんだよ。体育館締めるから早く出ろ。」

「はい…」

伊奈先生とふたりきりの体育館…
こういうときはいつも…

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