ウブで不器用なお殿様と天然くノ一の物語
「………来たのね。」

マスクをしていても目で伝わる。
灯里が呟いた。

「お待たせしましたでござる〜、お殿様方!」

あ、斎が目をパチパチしだした。

「本日のオススメは、
忍びの花園名物『天守閣オムライス』でござる〜!ご一緒にノンアルコールカクテル『くノ一の初恋』はいかがでござるか?」

「あ、あかり?」

「お殿様? “お里”でござるよ?」

「斎、“お里”だ。」

「…………お、お里…。」

ま、言葉にならない気持ちはわかる。

「それ、セットで2つ。」

「かしこまりましたでござる〜。」



「な、な、な、なんで⁉︎」

「……さっき見ただろ?語学力を買われて。」

まあ、嘘ではない。

「いや、参った。
最高だよ!語学力にコスプレ!
最強の組み合わせじゃん!」

やっぱり気に入ったか。

「え、でも、彬良はいいの?
アレ、コスプレの中でも結構際どいよね?
顔合せに心配でついてくるくらいなのに。」

もちろん、良いわけない。

「……今月で終わりなんだ。
今後は語学のレッスンだけを副業に考えてる。」

「そっかー。
いや〜、それも勿体無いな。
あれだけコスプレの似合う体型ってなかなかいないんだよ。
コスプレマニアなら垂涎ものだよ。」

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