ウブで不器用なお殿様と天然くノ一の物語
「2人でいられないなら、あの受験勉強は何だったの?
彬良と離れるために頑張ったの?
……私、こんなことなら、K大なんか入らなきゃ良かったって、何度も思ったよ⁉︎」

「ごめん、ごめん灯里!
悪かった…」

私を宥めようと抱きしめてくる。
変わらない彬良の温もり。
本当だったら、ずっと私のものだった。
でも、今は辛いだけだ……。

「……私、今日は帰る。」

「え!あ、灯里っ⁉︎」

彬良の腕を振り払って言う。

「ちょっと今、冷静でいられない。
何言い出すかわからないから。
帰る。」

「待って!
頼む、灯里、聞いてくれ!
俺、やり直したいんだ。
過ぎた日は取り戻せない。
でも、この先も灯里を失うなんて考えられない。これから先はずっと一緒にいたいんだ。
……………好きなんだ……。
もうずっと。
灯里だけ。
灯里だけが好きなんだ!」

だったらどうして‼︎

「……無理。
今すぐは考えられない。
…………1人になりたい。」

私は荷物を持って玄関に向かった。
一刻も早く、ここを出たい。

「灯里!
帰るなら送るから!」

「ここは通勤路よ。駅も近いし。
ちゃんと帰れるわ。
…………追いかけて来ないでね。」









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