ウブで不器用なお殿様と天然くノ一の物語
数学の特訓はその後も続いた。
もちろん、報酬もその都度いただいた。

2年になり、クラスは離れたが、特訓は続いた。

灯里はなんとか赤点をギリギリで免れる状態を続けていた。
その他の文系科目、特に英語2科目は常に満点なのに。
灯里にとって語学は一度聞けば、土が水を吸い込むように吸収するらしい。
発音も、ネイティブの講師が発するそのままの発音を吸収していく。

センターの数学さえなんとかなれば、国立K大の文学部に合格することも可能だろう。
しかし、灯里は欲がなく、私立大学に行くと言う。
もったいない。
それに、K大なら、医学部がある。
俺もかなり頑張らないといけないが、一緒の大学に通うことも可能なんじゃないか?

そう思い出したら、実行に移したくて、渋る灯里をセンターに向けて特訓しだした。

文系のセンター数学はそう難しくない。
理科は物理を避ければなんとかなりそうだ。
化学基礎と生物基礎…かな。
それなら俺が教えられる。
俺にとっては、社会を2科目取る方が大変そうだったが、灯里にとってはなんてことない話だった。

既に灯里の数学能力は理解していた。

とにかく、すぐに始めたとしても時間がない。 

休みの日も利用し、無理矢理教え込んだ。
灯里の家に家庭教師に行くこともあったので、健心と接する機会もあった。

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