ウブで不器用なお殿様と天然くノ一の物語
灯里のことは、高校時代から母親も気に入っていて、就職が決まらないのなら、父の秘書にすればいい、と進言してくれた。
そして、修司か彬良のどちらかの嫁に、と。

親父もかなり乗り気だった。
亡き親友の娘で、K大卒の才女だ。
どこに出しても恥ずかしくない嫁になるだろうと。
兄貴は俺の気持ちを知ってか知らずか、自分の嫁は自力で探す、と最初から戦線離脱。

元々、高校からの同級生なので、俺の嫁候補として、廣澤総合病院に迎え入れる事になった。
ま、この事実は本人の知らないところでの話。

実際には、病院関係者の殆どが俺の嫁と認識してるんだけど…。

そういうわけで、K大病院に研修後残らなかったのは…当然、実家に灯里がいるからなのだ。


せっかく、接点が持てたのに、4年制と6年制の、この2年がもどかしかった。
その上さらに2年の研修期間。

灯里が廣澤総合病院にいてるのに!
俺が実家に戻らないうちに、灯里が辞めてしまったらどーすんだよっ!

親父〜、絶対辞められるようなヘマすんなよ!

俺が廣澤に入るまで、絶対につなぎとめろよ!

そう願いながら、4年の月日を過ごしたのだった。















…………と、思ってたけど、

俺、やっと実家に戻ったのに……
灯里、遂に転職か……⁉︎


……… くノ一 ……

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