ウブで不器用なお殿様と天然くノ一の物語
そう。
待てども待てども、帰ってこず。
そのまま一生帰らぬ人になる事だってあるんだから。

「……そうだな。」

「はい、どうぞ。ブラックで良かったわよね?」

「ああ。……で、本題だ。」

きた。
なんなりと。受けて立つわよ!

「お前、ここ辞めるのか?」

「へ?ち、違う、違う!」

「じゃあ、趣味か?」

なんでそうなるの⁉︎

「それも違う!や、そりゃ、ちょっとは楽しいなぁ〜って思うけど…。」

「やっぱり。お前、楽しんでたよな⁉︎くノ一。」

楽しくお仕事して悪いのか?

いや。誤解を招きそうだから言わないけど。

「語学が活かせるし、接客業が嫌いなわけでもないから、バイトとして面白いよ?
でも、こんなにお世話になってるのに、ここ辞めるわけないじゃない!」

あ、あからさまにホッとしてるな。

「だったらなんで副業なんて…。」

うーん。
やっぱり言うしかないか…。
経営側の人に言うのもなぁ…て思うけど。
彬良は納得する理由がない限り、ここを出て行かないだろう。

「…あの、ね?
ハッキリ言っちゃうと、お金が必要なのよ。
その。来年あたり。」

あれ?
なんか突然、顔が険しくなってない?

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