ウブで不器用なお殿様と天然くノ一の物語
「あ、勘違いしないでよ?
私、借金なんてないからね⁉︎」

「じゃあなんだよ。
まさか、結婚する、とかじゃないよな…?」

へ?
あ、そうとったか。
まあ、それも年齢的に妥当だな。

「いや、そんな予定は全くないんだけどね。
違うの。健心よ。」

「健心⁇」

「そう。
今高1なの。せめて来年には予備校に通わせてあげたいなぁっと思って。彬良だって、高1から行ってたじゃない?」

「……どこ目指してるんだ?」

「あなたと同じよ。
父の母校でもあるから。」

「K大医学部か。
……でも、アイツ、俺と違ってかなり出来るんじゃないの?
最近会ってないけど。」

「確かに、否定はしない。
ずっとトップは守ってるよ。
でも、今の学校は健心的にはランク下げて行ってるからね。そこまで安心できるかどうか…。
特待生で、授業料を自分で勝ち取って、偉いと思うのよ。私もお母さんもすごく助かってる。
だからこそ、せめて人並みに予備校くらいはいかせてやりたいのよ。」

そうだ。
やっぱり、人並みの教育環境を用意してあげたい、と思うのは、姉として当然だと思う。

「模試の成績見てみないとなんとも言えないけど…まあ、気持ちはわかるよ。」

「うん。だからね、お金を貯めなきゃいけないのよ。」

よし。
これで副業の理由はわかってくれただろう。

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