ウブで不器用なお殿様と天然くノ一の物語
「でも、それとこれとは別だ。
そもそも……そんなに金がないのか?」

ないよ。
言いにくいけど…

「父の保険金は今後のことを考えて、極力使わないようにしてる。
今じゃ、お母さんも仕事してるのよ?
文化センターでお習字の先生してるの。
……それでもね、カツカツなのよ。
すごく…言いにくいんだけど…………
……ここの給与では、やっていけないのよ。」

彬良が、息を呑んだのがわかった。
根底にあるのが、ここの給与の低さだと初めて気付いたのだろう。

「そ、そんなに低いのか⁉︎
うちの給与……。」

あー。めちゃくちゃショック受けてるな。
彬良のせいじゃないのに。
性格的に気にするだろうから、言いたくなかったんだけど。

「あ、あのね?
医療関係の事務って、そう言うものなの。
有り難いと思ってるのよ?
就活出来なくて、職なしだった私を拾ってくださったんだもん。
世間的に、胸張って言える仕事に就かせてもらって、感謝してるの。」

「いや、でも!生活出来てないんだろ?
なんで言わなかったんだよ⁉︎」

「生活は出来てる。
ただ、貯金までは出来ないって言うだけのこと。」

「…………」

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