ウブで不器用なお殿様と天然くノ一の物語
お殿様、宿敵と対面する。
灯里とキスをした。

口止め料と言う名のキスだけど。

それでも、久しぶりのキスに興奮した。

俺にとっては…8年ぶりの!
俺、枯れすぎだよな…

あぁ、それにしても!
アイツ、キスする時の癖、変わってなかったなー。
俺の襟、両手で掴んで、せがむように上向いて目を瞑るんだ。
俺がその顔に見惚れてたら、アイツ言うんだ。
「……彬良?まだ?」って。
それも変わってない。

……可愛かったな〜〜〜‼︎‼︎‼︎

あのまま兄貴が入って来なかったら、マジで押し倒してたかも。
いや、DTの俺にはハードル高いんだけどさ。
でも、マジで離したくなかった。

決めた!
今度こそ、報酬とか口止め料とか、理由つけなくてもキス出来る権利を得る!
めっちゃ目標低い自覚はある。
けど、ヘタレの俺はここからのスタートだ。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



ここの家も久しぶりだ。
平田教授が亡くなった時に、親父と真っ先に駆けつけた。それ以来だな。
葬儀の手伝いも大して出来なかったから。
医学部生の俺は、授業を休むことも出来なかった。実習中だったしな。

でも本当はわかってる。
それは言い訳にしか過ぎない。
葬儀を手伝うことや、色々な手続きを側で手伝ってやることだけが、手伝いじゃない。
もっと精神的に支えてやることが大切だったんだ。
就活の悩み。
健心のこと。
母親のこと。
灯里の抱える不安、ちょっと電話して聴いてやるだけでも良かったんだよな。

院長秘書の給与のことも…
副業しなきゃならないほど、余裕ないなんて
考えもしなかった。
何やってたんだ、俺…。

灯里が一度でも他のヤツを選んだ事実が許せなかったんだ。



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