ウブで不器用なお殿様と天然くノ一の物語
「だから、俺を使えばいい。
予備校に行く気がないなら、早い方がいい。
俺に相談してるから予備校は必要ないって言え。
俺のことを気にくわないと思っても、灯里を安心させる材料になればいいだろ?」

「……ふーん。ちゃんと考えてんだね。
…だったら、ひとつ聞かせてほしい。」

「…なんだ?」

「あ、その前に、移動するよ。
ここで話してると、灯里がすぐにやってくる。
母さんと違って手際いいからな。後5分くらいしか猶予ない。
ここから先は聞かせたくないからな。」

そう言って、自分の部屋に俺を連れて行った。



「それで、さっきの話の続きだけど。
今日、ここに来て予備校やらバイトやらの話を
俺にしたのは、元カレとしての親切心?
それとも、灯里のこと、責任を取る気になったから?」

「……」

……直球過ぎて、言葉が出てこないぞ…。
色々確認したいこともあるし。
いや、しかし、灯里が呼びにくるまでの残り時間を考慮したら、健心の直球は当然のことだ。

「先に言うけど、俺は後者であってほしいと思ってる。」

「え?」

「誤解しないでほしいんだ。
灯里と彬良のこと、別に反対してるわけじゃない。
むしろ、灯里の年齢を考えたら、ちゃんと責任を取ってもらわないと困る。
4年だよ?4年も飼い殺しにして、このままポイッじゃ、灯里が可哀想すぎるだろ?」

「……な、飼い殺しって…」

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