ウブで不器用なお殿様と天然くノ一の物語
バイト先を考えるにあたって、もちろん真っ先に浮かんだのが水商売。
キャバクラなら時給も良い。

………しかし。
問題は私の容姿にあった。

身長153㎝。
小さなまん丸の顔に、これまたまん丸の大きな目。
色白で、こじんまりした鼻にはうっすらソバカスが…。
歳相応の26歳に見られたことはなく、大抵は高校生、いや、ひどい時は中学生に間違えられたりする。
メイクもちゃんとしてるのに!

お子様にしか見えない私に、キャバクラの面接が通るわけもなく。
(実際に『ゴメンね、うち捕まっちゃうよ』と断られている…)

偶然見つけたのが、この『忍びの花園』。
外国からのお殿様が多いため、語学が出来るなら、通常の時給より随分高く設定されていた。
英語、フランス語、中国語を話せる私にはとっても有利だったのだ。

しかも!
くノ一のコスチュームは、露出がすごいけど(忍者とは思えない独自のそれっぽい衣装)基本的に、衣装と同素材のマスクのようなもので口元をカバーする。
これで私だと分からない!

こうして、私はくノ一“お里(おさと)”(源氏名)になる決心をした。


今日もお殿様と楽しく手裏剣ゲーム。

時間が来るとステージに立ち、くノ一ダンスも披露。

くノ一カフェの鉄板イベント『瓦割り』は、空手有段者であるオーナーが担当。

いいのかな?
こんなに楽しくて。

オーナーも自由な人だし。
この職場を私はとても気に入っていた。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇



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