ウブで不器用なお殿様と天然くノ一の物語
付き合いが始まれば、少しの時間でも会いたくて。
お互い当直中、院内のコンビニで待ち合わせするだけでも、楽しかった。
夏休みを合わせて旅行にも行った。
おそらく、麗もじっくり1人の人と交際するのは初めての事だったはずだ。
焦らずゆっくり、俺たちなりの歴史を作り、あのホームパーティーから4年後、俺たちは結婚式を挙げた。

麗のお腹には俺たちの第一子が入っている。
今なら、藤田の気持ちがよくわかる。
たった1人の自分のオンナを見つけたら、他は何もいらない。
ただ盲目に、麗とお腹の子を愛することが最上の幸せなんだと。


◇ ◇


「はぁぁ〜ゆっくり出来たわ〜。」

麗が風呂から出てきた。
妊婦とは思えないスレンダーな体型。
元々細い上に、悪阻でかなり痩せたからな。
アラサーと呼ばれる歳になっても、相変わらず美しい。

「最近、脚が浮腫んで…。
でもお風呂でゆっくりマッサージ出来たわ。」

「そうか。言ってくれたら、俺も一緒に入って
マッサージしたのに。」

「んも〜。絶対それだけじゃ済まなくなるじゃない!」

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