ウブで不器用なお殿様と天然くノ一の物語
「おう!お疲れさん!
腹減ったろ?早く座れ。」

この兄弟はいつも思うけど、仲が良い。
修司先生が無愛想な彬良を構いたがるのだ。

「患者さんの家族が来てて、なかなかタイミングが合わない人だったから挨拶してきた。
そしたら捕まった。
めっちゃ、話の長いおばさんで。
挙げ句の果て、保険勧められた。」

うわ、それは気の毒に。

「あー、いるな。そういうおばさん。
まあ、無難に断っておけ。」

「ん……。腹減った。」

フフフ、甲斐甲斐しくお兄さんが世話焼きだした。面白い。
この2人のやり取りは、なかなかお目にかかれないからな。
病院スタッフなら垂涎もののショットだ。
写メ撮っとこうかな。

「ねぇ、健心聞いて。」

ん?麗先生?

「私ね、結婚して、廣澤に入職した時、ちょっと孤独だったの。
同年代の女医はいなくてね。
ナースとはどうしても、棲み分けがあるでしょう?
歳が近くても、あんまり親しく出来ないのよね。
それに私、廣澤だから、やっぱり皆さん遠慮があって。
食堂でもいつも1人だったの。
でもね、灯里ちゃんから声かけてもらって、もう、すっごく救われたの!
灯里ちゃんがいなかったら、実家に逃げ帰ってたかもしれないわ。」

麗先生…!
そんな風に思っててくれたんだ〜
思い切って声かけて良かった!

「れ、麗⁉︎
実家に帰るのはダメだぞ…?」

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