ウブで不器用なお殿様と天然くノ一の物語
「フフ、大丈夫。
今は灯里ちゃんという頼もしいお友達もいるし、なんてったって、お腹にあなたの子がいるんだから寂しくないわ。
でもね、結婚して、突然環境が変わった時は、ちょっとナーバスになってた。
だからね、灯里ちゃんにはすっごく感謝してるって話、健心に伝えたくて。」

「灯里はそういうヤツだよ。
俺も、高校入るまで、『ガリ勉廣澤』って言われてた。けど、高校では灯里が俺に構ってくるから、いつの間にかクラスに溶け込んでた。」

「あ、彬良⁉︎
どうしたの?突然…」

「いや…俺も、麗さんと同じ。
灯里に救われたひとりだからな。」

「……へぇ、反省したんだ…。」

ん?健心、なんか言った?

「姉もいつも麗さんの話してますよ。
思い切って話しかけて良かったって。」

「フフフ…大事なことよね?
感謝や好意、愛情も。言葉に出さないと伝わらないものね。」

「あー、そうだった。
あったな、セフレ事件。」

「セ、セフレっ⁉︎」

飲んでいたウーロン茶を吹き出しそうになった。

「しゅ、修司先生!健心の前でなんてことを…‼︎」

「いや、それくらい許容範囲です。
……どっちかと言うと、姉には刺激が強いんで、控えめにお話してくださると助かります。」

な、なんだって⁉︎
もうっ!健心たら〜
姉をバカにして〜〜

「刺激的な話じゃないのよ〜。
どちらかというと可愛いらしいお話なの。」

「俺の同期で、麗の小児科の先輩の藤田ってヤツの話。
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