ウブで不器用なお殿様と天然くノ一の物語
御曹司と初対面

『長谷川斎(はせがわいつき)です。
この度はお世話になります。
早速ですが、一度顔合せをしたいので、
平田さんのご都合を伺いたいと思います。
30分程、お時間いただけますか?』

このLINEが送られてきたのが午前7:30のこと。
昨日のうちに、麗先生から連絡がいったのか。
仕事の早い御曹司だな。

30分位なら、くノ一カフェが始まる前になんとかなるな。

『平田灯里(ひらたあかり)です。
早速のご連絡ありがとうございます。

今週日曜日の
午前9〜10時なら大丈夫です。
ご都合いかがでしょうか?』


こうして、最短の日曜日に顔合せをすることになった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


ふーっ…………完全に寝不足だ。

昨日のキスは、私から誘った自覚はある。
けど、あんなに激しくなるなんて!
それに、彬良が甘かった…

修司先生のお友達の話じゃないけど、高校の時の私達の関係を表すなら、“セフレ”ならぬ“キスフレンド”だ。
付き合ってたわけじゃないんだから。
麗先生の話通り、皆んなに見られてたなら、自他とも認める“キスフレ”だろう。

だったら今は?

送ってくれたお礼。
黙っておく口止め料。

そんなの、言い訳でしかない。
大人になった今、“キスフレ”なんてあり得ないってわかってる。

少なくとも私は……
今も昔も、気持ちがないとできない。

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