ウブで不器用なお殿様と天然くノ一の物語
あぁ、そうだった。
麗先生はここが地元じゃない。
嫁いできた不安と、初めての土地、初めての職場で、きっと寂しい思いをしていたはずだ。
それも、結婚してこの病院に入ったんだから、辛いことがあったとしても、どこにも逃げ場はない。昨日、実家に帰ってたかも…って言ったのはあながち嘘じゃないかもしれない。

「灯里ちゃんが声をかけてくれてから、麗の表情が明るくなった。
仕事に行くのも楽しそうで。
ランチタイムが楽しみだって。
気持ちが明るくなったから、小児科の方でも、麗の評判良くて。
すごくいい方向に向いてると思う。
だから、灯里ちゃんに感謝してる。」

「修司先生……。
私、そんな事まで深く考えずに声をかけただけなんです。
正直に言えば、一目惚れで。」

「え? 灯里ちゃん、そっちの趣味あるの⁉︎」

「フフフ…ないですよ〜。
もー、冗談に決まってるじゃないですかー。
美しすぎてお話してみたくなったんです。
修司先生だって……ビジュアルからでしょう?」

「……アハハハ……。
まあ、否定はしない。
外見はドストライクだったからな。
あ、でも、もちろん今は心から愛してるぞ!」

「わかってますって。
ご馳走様です。
私も、麗先生みたいな頼りになるお姉さん?的なお友達が出来て嬉しいです。
だから私も、感謝してます。」

「ありがとう!
……話はそれだけ。
ごめんね。時間取らせて。

…………いや、やっぱり。
彬良のことだけど……….。
少しだけ、麗に聞いちゃった。
ゴメン。」

そう言って、頭を下げる修司先生。

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