ウブで不器用なお殿様と天然くノ一の物語
「いや、やめてください!
それでなくても、とんでもないところお見せしてしまってますからっ!」

院長室でのキスを見られてるんだもの。
追及されて当然だ。

「2人の間で何があったか、これからどうなるのか、そんな事は聞かないから。
ただ、彬良のために、一言言っておきたくて。」

「……なんですか?」

「アイツは昔から不器用なヤツなんだ。
要領の良さだけでヘラヘラと生きてきた俺と違って、真面目なヤツで。
勉強も真面目にコツコツやってたし。
何事にも慎重だし。
一つのことにのめり込むタイプだ。
俺はめちゃくちゃ一途なヤツだと思ってる。
けど、超が付くヘタレなんだ。
慎重すぎて。臆病で。
そこは申し訳ない。
アイツなりに考えてることがあると思うから、その時は向き合ってやって。
アイツの話、聞いてやってほしい。」

修司先生……

「兄バカって言われると思うけど、
俺にとっては大事な弟なんだ。」

「………はい。
私も、そろそろちゃんと話し合わないとって、思ってたところなんで。」

麗先生から聞いてなかったとしても、私の気持ちはきっとお見通しだ。
拾ってもらった恩だけで、ここに居るわけじゃない事、きっと気付いているだろう。
今更、隠してもしょうがない。

「修司先生のお言葉は心に留めておきます。」

「ありがとう。
……ゴメンね。朝から仕事の邪魔しちゃって。話せて良かった。
じゃあ、俺そろそろ行くよ。」

「お仕事頑張ってください。」




…………やっぱり、このままじゃいけない。
話し合わなきゃ…。



◇◇


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