不倫の代償

「条件って?」

「結婚して しばらくは お義父さんのアパートに住んで。時期を見て 古いアパートを 俺達の家に 建て替えてくれるって言われたんだ。俺は 住宅ローンもなく 新築の家に住めるし。あいつの家族は すぐ近くに 娘を置けるし。一石二鳥だと思ったんだ。」

「まだ 家は建ててなかったの?」

「俺 子供が生まれてから あまり家にいなかったから。そういう話しを する状態じゃなかったんだ。」

「博幸 私と付き合う前も 家にいなかったの?」

「あいつは 子供が生まれると 実家に入り浸りになって。実家っていっても 歩いて2,3分の所だから。俺が 仕事に行くと すぐ実家に行って。夕食も実家で食べて。俺の分は タッパーに入れて 持ってくるんだ。実家から。子供も お風呂まで 実家で入れて。俺達の部屋は 本当に 寝るだけで。」

「うそでしょう?毎日?」

「そう。毎日。俺が帰ると あいつも子供も 寝ていて。たまに 少し早く帰って 子供が起きていると ” 寝せようと思ったのに。寝なくなっちゃう ” って 嫌な顔をするから。俺も 早く帰ると悪いような気がして。家なのに。」

「博幸 どこにいたの?」

「会社。いつも遅くまで 残っていたよ。資料を作ったりして。」

そういえば 私が入社した頃も 

博幸は いつも最後まで 会社にいた。

支店長だからだと 思っていたけれど。


「そんな夫婦って…」

私に 奥さんを 批判する資格はない。

わかっているけど… 私は言ってしまった。



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