不倫の代償
博幸と暮らす毎日は 穏やかに過ぎていく。
仕事は 2人とも 順調で。
私達が 大変な問題を 抱えていることさえ
忘れてしまうくらい。
私は 結論を出せないまま。
秋が 深まったある日
「雪穂。このマンション どう?」
博幸は 物件案内を差し出す。
「へぇ。なかなか 良い物件だね。博幸の支店で 扱うの?」
私は 物件概要を 細かくチェックして 博幸に聞く。
「ううん。俺が買うの。」
博幸は 私を見て ニコっと笑う。
「えっ?」
私は 驚いて 言葉に詰まった。
「雪穂。俺 決めたよ。今 先生に 書類を作ってもらっているんだ。あいつが それに署名したら 引っ越そう。俺達の新居だよ。」
「決めたって… 奥さんとは 離婚しないってこと?」
「事実上は離婚しているから。俺の奥さんは 雪穂だよ。籍なんか 関係ないよ。」
「そうだけど…」
「俺達の生活を 一番に考えよう。高い慰謝料払って 苦しい思いするよりいいよ。籍が 入っているかどうかなんて 誰にも わからないんだから。」
確かに 誰にも わからないかもしれない。
私達は 戸籍を 持ち歩くわけじゃないし。
でも 会社には 言えない。
私達が 夫婦として 生活していることを。