人魚姫〜もしも人魚姫と王子様の立場が逆だったら〜【不定期更新中】
「ここの海は、いつ来ても綺麗です。たまに素敵な物も漂流してきて、どういった物なのか想像するのも楽しいものですわ」
人魚が飛び込んだのは浅瀬なので、海に潜られたら見つかってしまいますが、彼は心配していませんでした。彼女がこの海に潜ったのを見たことがないからです。
それより人魚が気にしていたのは、全く別のことでした。
…初めて、声を聞いた。初めて、こんなに近くで見た。……海水越しだけど。
心の中で人魚は叫びそうになりました。
…? 初めて? だよな……?
「…あら、これは何かしら?」
「……っ!」
人魚は思い切り近くの岩に頭をぶつけました。
…気づかれた!?
「………本当に、綺麗ね」
どこか呟くような声でした。彼女は嬉しそうに目を細めます。
消すつもり、だったのに…と人魚は思わず呟きました。
「どこかで見たような貝殻。この文字も、どこかで……」
彼女は、急に頭痛がしてきたので頭を抑えました。
「また、頭が…。最近は平気だったのに、どうして……?」
彼女は、にこりと笑いかける誰かの顔を見ました。ですが霧のようなものがかかっていて、その声から男の人だと察することができる程度でした。
彼女は頭を押さえつつ、不思議そうにしながら数歩、元きた道へ戻りましたが、途中で何か思い出したように戻ってきて、しゃがみ、しばらく何かしています。砂をいじっているのでしょう。
しゃがんだ地点は人魚の書いた文字のすぐそばなので、人魚のいるところからよく見えました。
人魚は彼女が砂をいじっている間、海面で揺れる彼女の顔を見ていました。その優しい表情に何か思い出しそうになった時、彼女は立ち上がって、帰っていきました。
人魚が飛び込んだのは浅瀬なので、海に潜られたら見つかってしまいますが、彼は心配していませんでした。彼女がこの海に潜ったのを見たことがないからです。
それより人魚が気にしていたのは、全く別のことでした。
…初めて、声を聞いた。初めて、こんなに近くで見た。……海水越しだけど。
心の中で人魚は叫びそうになりました。
…? 初めて? だよな……?
「…あら、これは何かしら?」
「……っ!」
人魚は思い切り近くの岩に頭をぶつけました。
…気づかれた!?
「………本当に、綺麗ね」
どこか呟くような声でした。彼女は嬉しそうに目を細めます。
消すつもり、だったのに…と人魚は思わず呟きました。
「どこかで見たような貝殻。この文字も、どこかで……」
彼女は、急に頭痛がしてきたので頭を抑えました。
「また、頭が…。最近は平気だったのに、どうして……?」
彼女は、にこりと笑いかける誰かの顔を見ました。ですが霧のようなものがかかっていて、その声から男の人だと察することができる程度でした。
彼女は頭を押さえつつ、不思議そうにしながら数歩、元きた道へ戻りましたが、途中で何か思い出したように戻ってきて、しゃがみ、しばらく何かしています。砂をいじっているのでしょう。
しゃがんだ地点は人魚の書いた文字のすぐそばなので、人魚のいるところからよく見えました。
人魚は彼女が砂をいじっている間、海面で揺れる彼女の顔を見ていました。その優しい表情に何か思い出しそうになった時、彼女は立ち上がって、帰っていきました。