人魚姫〜もしも人魚姫と王子様の立場が逆だったら〜【不定期更新中】





‘私と唯一言い争いができるのは、召し使いのフィンだけです。ですがそれも対等ではありません。なので、貴台の文章を読ませていただいた時は今までにない程に喜んだものです。’







「あら、私は先程お会いした貴婦人の気持ちもわからなかったのよ。そんな豪華な服ばかり着ていたら腰を痛めるわよとおっしゃられたわ」






「それは立場を知らなかったから威張っていただけですよ」






「そうであろうと、私の印象が良くなかったことだけは確かよ」






彼女が——姫が「だから、私を他の方と同じように扱って」と言うと、男——フィンは困ったような顔をします。






「姫様…!」






「私はもう部屋に戻るけれど、入ってこないでね」






「…ですが、ひ——」






「お姫様命令よ」






「……はい」







フィンが不服そうな顔をしていることに気づかないフリをして、姫は部屋へ向かいます。






「…毎日毎日、どこへ行かれているんだ、姫様は……」






フィンの呟きは、誰の耳にも届くことなく消えていきました。







「…ふぅ。フィンは、どうしていつも私のことを特別扱いするのかしら」






姫が部屋に着いてから呟きます。
もちろんそれは、姫だからという理由に尽きないのですが…。






「私がいつも注意しているのに」







姫の綺麗な茶の混じった、まっすぐでツヤのあるサラサラな肩までの長さの髪が風に乗ってなびき、細くすっと伸びた首元があらわになります。
憂いを帯びた横顔を、窓から入ってくる太陽の光が照らします。







こういう時、人々は姫を自分とは次元の違うものとして見ます。自分とは、自分たちとは生まれてくる理由も、可能性も全然違うのだと、尊敬のまなざしで見つめます。
ですが姫は、自分は周りの人と同じ人間なのだから、同じように扱ってほしいと思っていらっしゃいます。



考え方からすれ違っているので、どちらかが寄り添わなければ絶対に伝わることなどないのですが…。







コンコン、とドアが叩かれます。






「姫様に会いに来たという方がいらっしゃっています。どうなさいますか?」






「通していいわ」






‘だからといって私のことを特別扱いなど決してしないでください。あなたにお目にかかってみたいと思います。なので今度私が海へ行く時は、文章ではなく直接話してみたいと思います。ですのでよろしければ、お会いできませんでしょうか。’







長い文章は、そこでやっと終わります。






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