人魚姫〜もしも人魚姫と王子様の立場が逆だったら〜【不定期更新中】
そして、「ああ、今は泳ぐ練習中で、両親もどこかから見守っているのかな?」と考えました。
「じゃあ、そこをどいて坊や。今から釣りをするから」
「釣り?」
人魚は『釣り』というものに興味を持ち、少し離れて見てみることにしました。
漁師は、釣り竿の端を海の中に入れて、釣りを始めました。
ザパァ…という音がして、1匹の魚が釣れました。
何をしているのかわからなくて、人魚はただ見守っていました。
次の瞬間、漁師は青い箱のようなものに魚を入れました。
人魚は彼がなぜそんなことをしたのかわからないので、また出すものだと思って見ていました。
けれど彼はそこから魚を一向に出しません。
それどころか、どんどん魚を釣っていきます。
「今日は大漁だぁ!」
そう言ってどんどんどんどん釣っていきました。
人魚は嫌な予感がしてしまって、何をするのか聞くために少し近づくことにしました。
と、次の瞬間、人魚の友達の魚を釣り上げたのです。
人魚は漁師のおじさんに近寄って、「おじさんは、その青い箱に入れて、どうするつもりなの?」と聞きました。
彼は、「うーん、焼き魚にでもして食べようかなぁ」と言ったのです。
その瞬間に、人魚の怒りは爆発しました。
「なんですって⁉︎ 食べるぅぅ⁉︎」
人魚はそう叫んで、箱の中にいる魚を全員海に返しました。
漁師はその行動をただぽかんとして見ていました。
「有り得ない…。あなたには僕の気持ちがわかりますか⁉︎ 僕の友達を僕の目の前で食べると即答された僕の気持ちが!」
漁師は、「え?」と言いました。
その言葉に人魚の怒りは爆発して、「もう帰ります。2度としないでください」と言ったのです。
そして海の底へと潜っていきました。
漁師のおじさんには何がなんなのかわかりませんでした。
それもそうでしょう。
海の中から唐突に現れて、釣りをしていたらなぜか怒られて、その上海に潜っていってしまうんですから。