人魚姫〜もしも人魚姫と王子様の立場が逆だったら〜【不定期更新中】
人魚は真っ先にお姉さん達に、「全くいいところじゃなかったよ! 確かに綺麗な眺めだったけれど、僕は絶望した!」と言いました。
お姉さん達は「え?」と言って皆顔を見合わせました。
そして「え? 人魚ー?」と彼を呼びました。
その頃人魚は部屋に戻っていました。
本当に心が傷つけられた気分でした。
陸上の世界に希望を持って行ったら、友達が食べられそうになっているという残酷な事態。
「もう嫌だ…」
人魚は泣き叫びながら悲しみました。
そしてその翌日のことです。
人魚の姉達は陸上の世界の素晴らしさを教えてあげたいと考えていました。
そして半ば強引に陸上の世界まで連れて行きました。
そこは前に来た時と全く変わらない景色でした。
とても綺麗で…美しくて…残酷。
人魚にはこの世界がそんなふうに見えました。
「うわぁ…」
姉達の声は同時に、そして無意識に出たものでした。
目線の先には、美しい少女がいました。
その人はお父さんと一緒にとても楽しそうに海にやってきました。
人魚はその人に釘づけになりました。
人魚のお姉さん達はみな口々に言いました。
「可愛い…」
「ね、うちらの比じゃないよ」
「クラクラする…」
人魚はただ黙って彼女を見ていました。
人魚は彼女に一目惚れをしたのです。
人魚は初めての感情に戸惑いました。
彼女はお父さんににっこりと笑いかけました。