人魚姫〜もしも人魚姫と王子様の立場が逆だったら〜【不定期更新中】
「お父様、ここの海は本当に綺麗ですわね」
「そうだな」
「…いるのかしら」
「?」
「なんでもないの」
お父さんにもう一度笑いかけたその人に、人魚はもう一度心臓を鷲掴みにされたようでした。
それと同時に、自分に優しく微笑むその人が頭の中に浮かびました。しかもそこは地上で、人魚は人のような身なりで豪華な服を着ています。
人魚は慌ててそのイメージを振り払います。
「なに、考えてんだ…」
にしても、と心の中で人魚が呟きました。
——どこかで、見覚えが……。
またぼんやりとしたイメージが浮かんできたので、人魚は振り払い、彼女をじっと見つめました。
…話を、してみたい。
人魚はそれから毎日のように海の上の世界を眺めるようになりました。
もちろん、最初のうちは短めに行っていたのですが、人魚が溺れていると勘違いして助けようとしてくれた男の人や、貝殻を見つけて目を輝かせる男の子を見ているうちに、だんだんと人魚の人間への固定観念はなくなっていき、地上を眺める時間が長くなっていきました。
それに第一、彼女はこの近くによく来るのです。
何をしに、ここに来るのだろう。あの人はどんな声で、どんな話をするのかな。
最初は見ているだけで満足していた彼の心の中でだんだんとそんな思いが強まっていきました。
ある日、人魚は思い切った決断をしました。
文通をすることにしたのです。
とは言っても手紙は海の中で書けませんし、そもそも紙が手に入らないので、人魚は岸に落ちていた小石をいくつか拾って、彼女が来るより先に文字を書いておくことにしました。
‘僕は毎日あなたが海に来る時にあなたを見ています。この綺麗な貝殻を、あなたが見つけて拾ってくれますように。’
「…なんだかこれ、気持ち悪くないか?」
人魚がそう呟いて水をかけて消そうとした時、彼女が現れました。
人魚は慌てて海に飛び込みます。
「そうだな」
「…いるのかしら」
「?」
「なんでもないの」
お父さんにもう一度笑いかけたその人に、人魚はもう一度心臓を鷲掴みにされたようでした。
それと同時に、自分に優しく微笑むその人が頭の中に浮かびました。しかもそこは地上で、人魚は人のような身なりで豪華な服を着ています。
人魚は慌ててそのイメージを振り払います。
「なに、考えてんだ…」
にしても、と心の中で人魚が呟きました。
——どこかで、見覚えが……。
またぼんやりとしたイメージが浮かんできたので、人魚は振り払い、彼女をじっと見つめました。
…話を、してみたい。
人魚はそれから毎日のように海の上の世界を眺めるようになりました。
もちろん、最初のうちは短めに行っていたのですが、人魚が溺れていると勘違いして助けようとしてくれた男の人や、貝殻を見つけて目を輝かせる男の子を見ているうちに、だんだんと人魚の人間への固定観念はなくなっていき、地上を眺める時間が長くなっていきました。
それに第一、彼女はこの近くによく来るのです。
何をしに、ここに来るのだろう。あの人はどんな声で、どんな話をするのかな。
最初は見ているだけで満足していた彼の心の中でだんだんとそんな思いが強まっていきました。
ある日、人魚は思い切った決断をしました。
文通をすることにしたのです。
とは言っても手紙は海の中で書けませんし、そもそも紙が手に入らないので、人魚は岸に落ちていた小石をいくつか拾って、彼女が来るより先に文字を書いておくことにしました。
‘僕は毎日あなたが海に来る時にあなたを見ています。この綺麗な貝殻を、あなたが見つけて拾ってくれますように。’
「…なんだかこれ、気持ち悪くないか?」
人魚がそう呟いて水をかけて消そうとした時、彼女が現れました。
人魚は慌てて海に飛び込みます。