レーセル帝国物語 皇帝陛下に見初められた侍女見習い
ということは,ポール兄さんにはこの先しばらく,非番の日がないってことか。
しばらく会えないのは(さみ)しいけれど,来週からは同じ城内で働けるんだもの。ほんの数日,淋しいのをガマンすれば済むことだ。
――それにしても。
「皇帝陛下って,どんな方なのかしら?」
兄さんが宿舎に戻って行ってから,わたしは(つぶや)いた。兄さんの話を聞いた限り,陛下の人物像は(なぞ)だらけだ。
わたしも,お名前くらいは知っている。レオナルド・エルヴァ―ト陛下。わたしが歴史上で(もっと)も尊敬する女性皇帝リディア・エルヴァ―ト陛下の直系の子孫にあたる方で,彼女の夫デニス氏が隣国(りんこく)スラバットの血を引いていたため,そのご子息(しそく)ジョルジュ陛下以降(いこう)の皇帝陛下の(ひとみ)はみな茶色いという。
< 10 / 59 >

この作品をシェア

pagetop