レーセル帝国物語 皇帝陛下に見初められた侍女見習い

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――お城で働き始めてから,数日後。
「ねえアリサ。陛下にお会いしたことある?」
わたしはアン様のお部屋の窓を()きながら,ホウキで()掃除(そうじ)をしているアリサに(たず)ねてみた。
彼女は中級貴族の家柄の出身だけれど,気さくで優しい子だ。宿舎でもわたしと同室である。
「う~ん,ないわね。あたしも,どんな方なのか一度お目にかかりたいんだけど」
「そう……。わたしもなの」
ポール兄さんの話では,陛下は普段,城内ではめったに人前に姿を現さないらしい。だから,城の侍従でも陛下のご尊顔(そんがん)を知っている人はそうそういないんだとか。
それなら余計に,どんな方なのか知りたくなる。
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