レーセル帝国物語 皇帝陛下に見初められた侍女見習い
「ええっ!?違うわよ!」
わたしはアリサの言葉に目を丸くし,完全否定した。
兄さんは今でもわたしのことを子供(あつか)いして,一度も"女性"として見てもらえたことがなかった。
それは歳が離れすぎているから仕方ないことだし,そもそもわたし自身,そんなことは望んでいない。
「……どうしてそう思ったの?」
「だって,ポール様って素敵(ステキ)じゃない?好青年(こうせいねん)だし(たくま)しいし,(いさ)ましさと優しさをあわせ持っていて。あたしなら恋人に立候補するわね,絶対」
「…………そう」
うっとりと目を細めるアリサを,わたしは首を傾げながら見つめた。
ポール兄さんに恋人……。なんだか想像がつかない。今までだって,そんな女性(ひと)がいるなんて聞いたことないし。
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