レーセル帝国物語 皇帝陛下に見初められた侍女見習い
しかも,リディア皇帝の時代から後には,女官になるための身分の制限が撤廃(てっぱい)され,門扉(もんぴ)も昔よりずっと広くなったらしい。
かつては中級以上の貴族の娘に限定されていたのが,今ではありがたいことに労働階級でも,わたしみたいな下級貴族でも,試験にさえ受かれば女官としてお勤めができる。
……まあこれは,わたしの愛読書『レーセル帝国の歴史』の中に書かれていることだけれど。
「――そういえばイライザ,城に後宮(こうきゅう)があるのを知ってるか?」
「うん,まあ一応は。試験の時,お城の設備の問題にも出ていたし,歴史書にも出てくるからね。でも,イヴァン陛下(へいか)の頃から全く利用されてないんでしょ?」
"後宮"とは,皇后陛下以外の皇帝の妻や側室の住まいとなっている場所のことだ。
< 4 / 59 >

この作品をシェア

pagetop